2012年04月15日

「自分が欲しいものをつくりたい」という情熱と、それを実現するための技術やセンスの素晴らしさ:舘神龍彦さん主催手帳オフレポート(2012年4月14日)

 4月14日(土)に行われた、舘神龍彦さん主催の手帳オフに参加する。舘神さんは手帳評論家(手帳王子)、デジアナリストとしても知られる文筆家、編集者。手帳オフは、年末年始を中心に、手帳や文房具、デジタルガジェットなどの愛好家が集まって交流し、情報交換する会。今回はいつもと趣向が異なっていて、「綴じ手帳のコンパネ設計」がテーマ。綴じ手帳を自らつくっている5名の方をパネラーに、それぞれの手帳のあり方について話を伺うことで、手帳に求められるものを考えようという企画。
 なお今回の手帳オフは、PLAYOFFブランドで手帳を販売している若越印刷株式会社とのコラボレーション企画だったようで、同社がイベント「手帳を楽しむ会」を開催していた「ふくい南青山291」の会議室での開催。
 会の内容をレポートします。

・館神blog:http://tategami.cocolog-nifty.com/blog/
・pocket book company PLAYOFF - オリジナル手帳製作販売のプレイオフ:http://www.playoff-diary.com/index.html
・トップページ|福井 敦賀 印刷会社 若越印刷株式会社:http://www.jakuetsu-print.com/



イントロダクション

 舘神さんより今回のテーマについて説明。

・手帳のコントロールパネルの軸について考える。サイズ、機能、ページ構成、記入方法、他のツールとの組み合わせ、など。
・綴じ手帳はシステム手帳とは異なり、それ自体で完結している。どのようなページから始まって、どのように終わるか、構成を練る必要がある。それが綴じ手帳をつくることの意味だろう。
・仮説としては、5名のパネラーの自作手帳の幅(どこまでつくり込むのか)の中に、理想の手帳についての普遍的な内容が見つかるのではないか。

#自作をされた方の手帳に求めるものを知ることで、市販の手帳を使ったり、それをカスタマイズする方も、改めて自分の手帳に求めるものを考えよう、というテーマのようです。


第一部

 5名のパネラーの方による、自身の手帳の紹介。

●余白手帳(Tさん)
 余白手帳(ティーズフリーダイアリー):http://sohiro.com/YohakuTecho/index.html

・高橋書店の手帳大賞を受賞し、商品化。制作・販売は高橋書店。

・なぜ余白のある手帳なのか。
 1.メモを多く取る:企画、アイデアのメモ。スケジュールの管理のメモ。その他のメモ。
  これらのメモには種類、順位がある。
 2.手帳のレイアウトは見開きがいい。全体を俯瞰して見たいため。

→見開きタイプはメモのスペースがない。
 →見開きで、かつメモが書ける。両立のための余白手帳。
  余白にはメモとともに付箋も貼れる。
  サイズはA5〜B6。
  しおりを3本にした。

●ジブン手帳(Sさん)
 ジブン手帳 | Facebook:http://ja-jp.facebook.com/jibuntecho

・制作、販売を始めて3年目。

・手帳は一年しか使わないが、手帳を積み重ねていくと自分の分身になる。手帳にはライフログを残したい。
 大学生の頃に手帳をつくった。仕事に就いてから忙しく自分がなくなった気がした。自分がやりたいことを考えて、文房具の開発だと思った。自分にあった手帳をつくりたいと思い、開発。

・三冊分冊。1年の記録、LIFE(人生についての記録)、アイデアメモ。

・時間は24時間。1日の全てをフォローしたい。ただし、深夜は目盛りを小さくしている。

・メモは、かつてはポストイットに書いて貼っていたが、なくなることが多かった。アイデアは分冊で一箇所にまとめる。場所はどこでも良いが、ひとつの場所にまとめたかった。
 アイデアやLIFEは次の年にも繰り越す。翌年になってしまってしまうと、それを出して見返さないといけない。

・メモを見返す重要性。スキャンしても見ないとだめ。めくった時に他のページにも目が行くことの効果。
 書き終わったメモの管理は課題。
 メモのフォーマットを統一したかった。

●Cook's tour(Hさん)

・製品化を目指し、5年間試行。デザインから製本まで自分で行う。

・こどもの頃からものづくりが好きだった。日曜大工など。

・綴じ手帳という形が重要。ページを差し替えるのは好きではない。メモ・アイデアの連続性、連なりが重要。引き出しにしまっても取り出して見る。その行為そのものを楽しんでいる。クロッキー帳やメールも分類せず時系列で並べる。
 デザインが良い手帳はシステム手帳が多い。システム手帳を製本するなら綴じ手帳をつくりたいと思った。

・月間予定と月間ToDoはその月の間ずっと見える。間のプロジェクト別予定と週間予定のページは一段下がっている(外側をカットして幅を狭くしてある)。
・便箋、封筒のページもある。使わないとしても書く欄があるのは嬉しい。可能性のある嬉しさ。

●GTD手帳(Nさん)

・自分のためだけにつくっている。
 手帳と革カバーを自作。手帳はエクセルでレイアウト作成し、印刷・製本。

・仕事で日々の業務に追われていたのを手帳で解決したいと思った。
 かつてはPDAを使用。メモを繰越しできることが便利だったが、スケジュールが俯瞰できない点が不満だった。
 6〜7年前に能率手帳ネクサスバーチカルを使用。超整理手帳のカバーを使ったが、大きさがあわずカバーを自作した。その後カバーに合った手帳を自作。

・スケジュール帳と記録帳(日記)
 スケジュール帳にはGTDの考え方を応用する。タスクを分類し、その週に行う業務を洗い出す。それを日々の業務に落とし込む。これらのToDoの流れを手帳の上にレイアウト。スケジュールは下に配置。
 記録帳は日々の日記、アイデア。
 スケジュール帳、記録帳ともプライベートの内容は別冊。スケジュール帳の中で必要なものは記録帳に転記。

●トコだけ手帳(Iさん)
 「トコだけ手帳」はコチラ:http://www009.upp.so-net.ne.jp/uhauha/

・6年目。個人でデザインし印刷会社へ制作を依頼。

・ヴィトンのポッシュに入る手帳が欲しかった。コンパクトな最小のサイズ。ヴィトンの手帳は使い勝手が良くない。他に同じサイズの手帳が市販されていなかった。

・朝5時〜翌朝5時の24時間の時間軸。時間、日付の目盛りは均等にしている。これまではバーチカルタイプだったが、今年はホリゾンタルタイプ(上下開き)。
 メモ欄はあまりいらない。
tokodake2012

・自分でつくる(印刷・製本する)よりも、任せるところはプロに任せる。自分の1冊のために100冊単位のロットで注文。

・Yahoo!知恵袋に「ヴィトンのカバーにあった手帳は?」という質問と回答があって、注文が増え、昨年完売した。


第二部:パネラー間の質疑応答

舘神:HさんのCook's tourに段差(幅の短いページ)は必要か。ページをめくることで解決できないか。
H:年間、月間が頭にあって、週間がその後にあると、同じ日についてめくって見る必要がある。めくるのは嫌。常に見えている方が良い。
T:Hさんの手帳は完結している。発明だと思う。ただし、製品化する場合は色々考える点があるかもしれない。
S:目的に合わせた最適な形だと思う。Hさんの「発明」、「ないならつくる」という考えに賛成。そうすると世の中どんどん良くなると思う。

舘神:手帳の商品化について。
H:自分で試行錯誤してつくりたいという思いもある。毎年つくるのは面倒で、年末には年賀状を書かなくてはということと近い思いを持つ。一方で、商品にして人から色々と言われたくないという思いもある。
I:自分は手作業が駄目だけれど、品質にこだわりたいので印刷業者に依頼した。100冊くらいでは受けてもらえない。個人は相手にされない。「やめておいた方がいい」と言われた。探したところ、群馬に受けてくれる会社が見つかった。
 利益を出したいわけではなく、購入した方に制作費を負担してもらおうという思いで200冊つくっている。以前単価を下げるため300冊つくって100冊残ったことがあった。それは嫌なので、コストを下げるために見積を取っている。
N:販売や量産はどこかでやってくれればそれに越したことはない。ただ、自分の手帳は自分の効率化のため。自分でもう一冊つくって売るとしたら値段設定は難しい。価格はあってないようなもの。
H:通常は自分用の一冊しかつくらない。以前四冊つくった年があって、それは他の方に差し上げた。
N:Hさんの手帳は、商品化するとなると製本が難しい。幅が狭いページをカットするのは機械には難しいはず。手作業になる。
H:幅は最後にカッターでカットする。自分で作業をする分にはそれほど難しくはない。製本よりもデザインの方が大変。イラストレーターで100〜200のレイヤーを使う。文字も多いので、動きが重くなる。人件費を除いたコストは紙代くらいで、1,000円くらい。紙はクロッキー帳を裁断している。プリンタとの相性からこの用紙を選んだ。

#ここで、他の参加者から、Cook's tourはミシン目を入れて、買った人が折るなり切り取るなりすればよいのではないかという意見が。他にも、製本前のキットを準備して、みんながそれぞれ自分で手帳をつくる合宿やワークショップなどのアイデアも。

I:自分はオリジナルの表紙で製本したものもある。
S:糸綴じをする作業は結構楽しい。
N:糸綴じの方法や糊付けの方法など、手帳の製本にはノウハウがある。メーカーのイベントを見学すると、メーカーの人にとっては当たり前のことが勉強になる。

舘神:手帳オフを始めて5年くらい。自作というテーマでどのくらいの方が来るかと思ったが、リフィルや手帳そのもの、カバーなどの自作があり、濃い。
N:自作をしようと思っていたがうまく行かず、自作はあきらめようかと悩んでいたが、手帳オフのおかげで自作ができた。

参加者からの質疑応答

参加者:製品化すると自分の手から離れる部分もあると思うが、その後のカスタマイズや調整はどのように行うか。
S:現在は自分でコントロールしてつくって販売している。Facebookでリクエストを受けて反映させている部分もある。ジブン手帳はみんなの意見を取り入れてつくった手帳でもある。
T:高橋書店はアンケートの結果を反映させて、改善をする。そのカスタマイズにも参加予定。自分自身もwebサイトでアンケートを募集している。
I:意見をもらうことは多い。納得できる意見は活かす。手帳好きな人は自分の思いや意見が多い。「ここは変えないで欲しい」など。
舘神:メーカーも毎年手帳のマイナーチェンジを行っている。
N:自分がやりたいことと他人の意見の兼ね合いについて。
S:自分のポリシーにあっているものだけ取り入れる。ジブン手帳はすべての部分になぜそうなっているか根拠がある。それは説明できる。ただ、自分が経験しないと分からないことは他の人の経験を参考にする。

I:今年はレイアウトを変更した。ホリゾンタルのレイアウト。「なにを書くか」をテーマにした。横書きができると長く書ける。
H:バーチカルタイプだと、日をまたぐ出来事(徹夜など)の時に連続性が感じられない。自分は日付も時間も縦に連続させている。
S:バーチカルタイプ。一日は区切ってしまう。バーチカルはその日のリズムが分かるのが良さだと思う。
参加者:バーチカルとホリゾンタルでの予定の書き方の違い。ホリゾンタルやレフト式で横に時間軸が並んでいると、細かな予定が縦書きになってしまうのではないか。
I:線だけは時間軸にあわせて記入。文字は時間軸をはみ出して書いたり、下の方に書いたりする。


第三部:参加者との質疑応答

参加者:手帳づくりのツール、方法について。デザインを中心に。
H:Macintoshとイラストレーター。インクジェットプリンタ。
N:WindowsとExcel。レーザープリンタは手帳の印刷のために購入した。
I:Macintoshとイラストレーター、クオークエクスプレス。誤植については納品された時にいつもドキドキする。
T:デザインはWindowsとイラストレーター。以前はMacintoshだったが、取引先にWindowsが多くなったので。
S:Macintoshとイラストレーター。これが一番早いと思う。月齢などの誤りに対する怖さはある。講談社から販売した年は、鉄道路線図などはプロのチェックを経た。他にも、自分の時間の目安として、日の出日の入の時間が分かるようにしている。この作業は個人的には楽しい。

参加者:イラストレーターと編集ソフト(インデザインやクオークエクスプレス)の使い分けについて。日付はインデザインが使えるのではないか。
H:インデザインで日付を流し込むと、色や線の太さが変わってしまう。原因が分からないが、そのためイラストレーターで手打ちしている。
I:色は特色一色で印刷を依頼しているので問題ない。クオークエクスプレスはページのデータをつくると自動的に面付けをしてくれる。印刷会社にはインデザインで入稿して欲しいと言われる。ただ、クオークも旧版であれば大丈夫。

#ここから、印刷における色の話がしばらく続く。CMYKとRGBによる色の違い、ソフトウェア間、ソフトウェアとプリンタの色情報の話、印刷会社の色の設定についてなど。参加者の方から次々と解説が出てくる。すごいな。手帳の会なのですが、画像工学のゼミみたいな雰囲気に。

#さらに、デザイン用ソフトのアカデミック版についての情報も出てきたりする。ますます画像工学のゼミみたいな雰囲気に。


参加者:現在はカバーはオリジナルだが、中は市販の手帳を使っている。ただ、不満もある。話を聞いていると、自分でデザインしてつくってみたくなる。

参加者:Cook's tourとジブン手帳は、日付がレフト式とバーチカル式で異なっていても、時間軸は上から下に並んでいる点で共通。手帳の分類は日付の分け方で考えているが、他にも観点がある。手帳における区切りをどこに置くか。
舘神:手帳を自作する方は、手帳のパワーユーザーであるとともに時間のパワーユーザーでもあるのではないか。
H:工程表を組む仕事では、既存の手帳には不満がある。長期的に続く仕事なので、時系列で続く記録が必要。どこまでも伸ばせないので、Cook's tourでは一週間で区切っている。
参加者:1年の日付がジャバラに並んだ手帳(D-BROS「クリエーターズ ダイアリー」)。裏はノートになっている。yPadのようなデザインの元祖かもしれない。
参加者:モレスキンもジャバラ式の手帳を発売した。

舘神:人それぞれの手帳の書き方がある。仕事の流れ、考えの流れがそこに反映している。次回以降のテーマとして設定したい。
S:仕事もプライペートも一冊の手帳に書く。ペンの色を使い分ける。
N:二冊の手帳を、半年分ずつ、時期をずらしてつくる。3ヶ月に一回は手帳をつくっている。常にバージョンアップしている。

参加者:ライフログとしての手帳について。かつては手帳に写真や新聞の切抜きを貼っていた。今はデジタルのデータがある。どう管理するか。ライフログの統合。
S:時間やお金があれば違う方法になるかもしれない。時間がないと手帳に書くようになる。デジタルの起動や操作よりも速いので。ただ、デジタルでやればいいことはデジタルでやる。
参加者:紙をスキャンしてpdf化することは。
S:取っている。それは手帳を失くしたときのための保険。ネットワークにつながるHDDを使って、パーソナル・クラウドのような環境もつくっている。
舘神:動画でライフログを取るような場合など、大きなデジタルデータを扱う人は、大容量のHDDやクラウドストレージが必要になるかもしれない。


 パネラーの方の話、他の方の話を聞いて感じたのは、「自分が欲しいものをつくりたい」という情熱と、それを実現するための技術やセンスの素晴らしさ。私のように、欲しいという思いがあっても、それを実現する技術がない人間は、存在するものである種の妥協をしたり、多少のカスタマイズをして満足している。
 しかし、欲しいという熱意と、それを実現できる技術を積み重ねた人は、更に満足がいくものがつくれるのだなあと。アートユニット明和電機の土佐信道さんに「ロマンスとエンジニアリングがあれば、人は空を飛べる」という名言があるのだが(正確には「ロマンスとエンジニアリング。そのどちらかが欠けても、人間は空を飛べない」らしい)、まさにそんな気がする。
 実は最近手帳の使い方がぐでぐでになっていた私ですが、4月という時期でもあるし、もう一度手帳の使い方を考えてみようと思わせていただけるオフ会になりました。


参加者の方のレポート・感想

自作手帳の鬼ども集う(舘神さんの手帳オフ:パネラー編): トホホのススメ:
http://a-b-c.air-nifty.com/blog/2012/04/post-985b.html(Nさんによるレポート)


 手帳に関するブログ記事へのリンクをまとめたページはこちら。
・木の葉燃朗の「手帳と俺」:
 http://konohamoero.web.fc2.com/book/techo.html
ラベル:文房具 文具 手帳
posted by 木の葉燃朗 at 12:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 俺なり知的生産&文房具 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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